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名古屋高等裁判所 昭和24年(控)577号 判決

被告人

田炳斗

主文

本件控訴を棄却する。

理由

弁護人武藤鹿三の控訴趣意は別紙の通りである。

その第一点について。

原審第一回公判調書の記載によれば、檢察官が冐頭陳述を爲していないことは、所論の通りで、刑事訴訟法第二百九十六條の規定に違反していることは、間違いがない。しかし檢察官が冐頭陳述を爲す趣旨は、裁判官は、起訴状一本しか見ていないので、事件の詳細に通ぜずに法廷に臨むことになり、手続の進行又は証人等の尋問について、支障が多いところから、予め証拠調の全貌を知る必要があり、これがため檢察官にこれが陳述を爲さしむるもので、本件のように、簡單な窃盜行爲一回の犯行で、而も被告人が自白している事件に付てまで、一々冐頭陳述を爲さしめることは、却つて手続が煩雜で、時間を空費するばかりで、裁判官の手続進行に利するところがないのみならず、被告人の利益を毫も毀損しないものについては、右冐頭陳述がなくても、判決に影響を及ぼすところがない。從つて本件において冐頭陳述をさせなかつた違法は、判決に影響するところがないので、論旨は採用することができない。

以下省略

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